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Lunar iDXA

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PRODIGY Fuga

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

Lunar iDXA  販売名称:X線骨密度測定装置Lunar iDXA
医療機器認証番号:21800BZX10007000

PRODIGY Fuga  販売名称:X線骨密度測定装置 PRODIGY
医療機器認証番号:21500BZY00582000
PRODIGY FugaはenCORE SW V16.sp1以降のVersionを搭載する
上記医療機器のニックネームです

ロコモティブシンドロームとは? ~超高齢社会に不可欠な対策を進めよう!~

医療法人社団愛友会 伊奈病院整形外科部長/NPO法人 高齢者運動器疾患研究所 代表理事
石橋 英明 先生



はじめに
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ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)は、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「運動器の障害により移動機能が低下した状態」と定義されています。
つまり、運動機能の低下や運動器疾患で、歩行や階段昇降などの身体を移動する機能が落ちてくる状態です。

2007年はわが国の高齢化率が21%を超えて超高齢社会に突入した年で、その後も高齢化の上昇は続き、2016年には27.3%まで高齢化率があがっています。ちなみに高齢化率とは、全人口に対する65才以上の方の割合です。この高齢化率が7%以上で高齢化社会、14%以上で高齢社会、21%以上で超高齢社会といいます。近年、要介護者も急激に増加し、2000年の介護保険制度開始時に240万人であった要支援・要介護認定者は、2016年には630万人まで増加しました。
今後は高齢者の中でも高い年齢の人口が増える「高齢者の高齢化」がさらに進行するため、要支援・要介護受給者が著しく増加すると考えられています。

2013年の厚生労働省の国民活基礎調査によると、骨粗鬆症に伴う骨折や、変形性関節症などの関節疾患、脊柱管狭窄症に伴う脊髄損傷などの運動器疾患は、要支援・要介護認定者の認定要因の25%を占めることがわかっています。
このように、未曽有の高齢者の増加、要支援・要介護者の急激な増加、その認定要因として運動器疾患の重要性から、提唱から10年経った2017年の現在もロコモの重要性はますます高まっています。


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ロコモティブシンドロームの進行と評価法
ロコモは加齢に伴い進行します。 ただし、遺伝の影響も受けますし、運動習慣の欠如、不活発な生活習慣、不適切な栄養摂取などの要因によっても加速します。高齢期になってロコモが進行した状態になると、要支援、要介護が必要なほど移動機能が低下しますが、ロコモはそのずっと前から徐々に進んでいきます。骨密度は40代から低下し始めますし、筋量も40代から年間0.5~1%ずつ減少します。同時期から運動機能も衰えはじめ、関節や脊椎の変化もあらわれます。
こうした運動器の脆弱化がロコモそのものと言え、ロコモを早い時期に察知し、早めに運動習慣や栄養摂取、生活習慣を改善し、運動器疾患を予防することが重要となります。


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その察知の方法として、ロコモーションチェック(以下、ロコチェック)という自己チェックと、ロコモの有無や重症度を評価するためのロコモ度テストがあります。
ロコチェックは、介護予防の基本チェックリストや転倒スコアなどで使われている項目から抽出した7項目から構成され、1項目でも該当があると運動機能が低下しており、現在または将来のロコモの懸念があると判定されます。

その7項目は以下のとおりです。

1. 片脚立ちで靴下がはけない
2. 階段を上るのに手すりが必要である
3. 青信号で横断歩道を渡りきれない
4. 15分くらい続けて歩けない
5. 家の中でつまずいたり滑ったりする
6. 2kg程度の買い物(1Lの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である
7. 家のやや重い仕事(掃除機がけや布団の上げ下ろし)が困難である

ロコモ度テストは、1.下肢筋力を評価する「立ち上がりテスト」、2.歩幅を評価する「2ステップテスト」、
3.運動器の症状や生活機能などを評価する質問票である「ロコモ25」の3テストから構成されています。

立ち上がりテストは、10~40センチの台に腰かけた状態で両脚または片脚で立ち上がれるかをみます。


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2ステップテストは、両脚を揃えた状態からできる限りの大股で2歩進んで両足を揃えて止まり、進んだ距離(㎝)を身長(㎝)で割った値を2ステップ値として評価します。


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ロコモ25は、25項目からなる質問票で各設問の5項目の選択肢に0~4点が配転され、合計0~100点で評価し、0点が最も良い状態で、100点が最も悪い状態を示します。


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これらのテストの結果から、ロコモの程度を示すロコモ度1、ロコモ度2を判定します。
ロコモ度1はロコモが始まった状態で、立ち上がりテストで40㎝の台から片脚で立ち上がれない場合、2ステップ値が1.3未満、ロコモ25のスコアが7点以上のいずれかに該当する場合です。
ロコモ度2はロコモが進行した状態で、立ち上がりテストで20㎝の台から両脚で立ち上がれない場合、2ステップ値が1.1未満、ロコモ25のスコアが16点以上のいずれかに該当する場合です。

ロコモ度1からロコモの状態です。
たとえば、普段使っている椅子の高さは42~46㎝程度ですので、こうした椅子から片脚で立ち上がれなくなったら既にロコモだということになります。


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以上の評価法や、このあと説明する対策のための運動は、
ロコモチャレンジ!推進協議会のホームページ(https://locomo-joa.jp/)で、動画も含めてわかりやすく解説されています。

このように運動機能の低下は、ロコチェック、ロコモ度テストで察知・評価できますが、骨密度の低下、筋量の低下を早めに察知することも重要です。骨密度は、腰椎や大腿骨近位部などの海綿骨が多い部分をDXA法で測定することで、早めに低下した状態を察知することができます。(骨粗しょう症の診療については日本各地でリエゾンサービスが行われています。骨粗しょう症、特に骨密度測定DXA装置に関連するリエゾンサービスについてご興味のある方は是非、以下をクリックしてお読みください。)


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また、DXA法における体組成測定では全身各部位の骨密度、脂肪量(Fat Mass, g)、非脂肪量(Lean Body Mass, g)、骨量(Bone mineral Content, g)の計測ができます。非脂肪量は純然たる筋肉量とは言い難いですが、四肢の場合、脂肪量と骨量を除くと、残る非脂肪量はほぼ筋肉量と言えます。その四肢の非脂肪量合計を身長(m)の2乗で除した値を指標とするSMI(Skeletal mass index)も得られます。

DXA装置についてご興味のある方は、是非、以下をクリックしてお読みください。


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以上からDXA法は筋量を想定するにも有力な方法とも言えます。
骨と筋肉というロコモの重要なふたつの組織の評価に、DXA法がとても重要であるといえます。


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ロコモティブシンドロームの対
ロコモの対策は、運動習慣をつけること、栄養摂取状況の改善、生活習慣の改善、運動器疾患の予防と治療です。運動習慣は、中等度のレジスタンストレーニングおよび有酸素運動、中等度の強度のスポーツや体操などを週2回以上続けることが推奨されています。中等度の強度とは、ややきつい程度、やや汗ばむ程度の運動強度です。また、屋内で簡便にできる運動としてロコモーショントレーニング(ロコトレ)が日本整形外科学会から提案されています。これは、下肢筋力を強化するスクワット、バランスを維持・改善する開眼片脚起立運動、さらに下腿三頭筋を強化するヒールレイズ(踵上げ)、下肢筋力・バランス・柔軟性を高めるフロントランジの4種の運動です。


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歩行の自立は高齢期の自立に直結するため、ロコモ対策としてのロコトレは下肢筋力とバランスを重視します。
ただ高齢期の運動機能として、上肢や体幹筋力、柔軟性や瞬発力や持久力も重要であることは言うまでもありません。
速歩やジョギング、エアロビクスや種々の体操、フィットネスジムでのマシントレーニング、ストレッチなど様々な運動が
ロコモ予防につながります。


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栄養摂取については、栄養素のバランスのとれた食事をとることを基本として、筋肉や骨の材料となるたんぱく質やカルシウムとともに、ビタミンD、K、B12、葉酸が不足しないように摂取することが重要です。特に高齢者ではまた多様な食品を摂取することで重要で、食品の多様性が運動機能と関連することがわかっています。また、活動性の高い生活を送りことも重要です。よく歩くこと、階段をよく使うことなど、生活の中で運動器を使うようにします。



ロコモ対策をこれから広げよう
広く国民にロコモ対策の重要性と具体策を認知、理解していただくことは、健康寿命の延伸に重要です。そのために、普及のための市民講座、メディアでの啓発記事やテレビ番組などでも積極的に広報することは効果的です。また、成長期、若年期からの運動器の健康も重要ですので、「こどものロコモ」の啓発や若年女性へのロコモ啓発を進めていく必要があります。

「高齢者の高齢化」は日本の深刻な問題ですが、わが国の平均寿命は世界トップクラスで、健康寿命も同様です。今後、さらに国全体が高齢化に適応するためにはロコモ対策をしっかり実施していくことが大切です。ロコモの当面の目標は認知率の向上ですが、そこからさらにロコモに対する国民の理解を深め、運動、栄養、生活習慣の改善といった行動変容につなげていくことが大切です。

これから日本が高齢化と共存できる幸せな国であり続けるために、医療者と一般国民が知恵を絞って有効なロコモ対策を考えていくことが必要になってきています。