第五話 「外部保存」のメリットとは?(#2 クラウドの本質)
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今回のキーワード: 災害対策、所有と利用、TCO、業務の委託、管理負担の軽減

イチロー:「これも例えばだけど、システムを導入する時の初期費用、すなわち、ハードウェア代、ソフトウェア代、インストールなどのSE作業費の合計が1,500万円だとするよ。それに対して、同じことがクラウドでは月々25万円で利用できるとしたら、最初の月に払う費用は、1,500万円対25万円ということになる。病院経営にとっても資金繰りが楽になる。すなわちキャッシュフローが良くなるってことだね。」

くらら:「でも、最終的に払う総額ではどうなんですか?」

イチロー:「いい質問だね。そういう支払総額のことを、Total Cost of Ownership、略してTCOって言うよ。」

くらら:「ティーシーオー?」

イチロー:「うん、Total Cost of Ownership、略してTCOだよ。クラウドの場合、所有はしないので、ownership(持ち主であること)っていうのはちょっと正確ではないけどね。先ほどの例では、システムの利用期間が5年間だとすると、クラウドの場合のTCOは25万円 x 60ヶ月 = 1,500万円だね。」

くらら: 「あれ?『所有』でも、『利用』でも、TCOは同じってことですか?」
イチロー: 「いや、『所有』の場合は、システムの障害に備えて保守契約を結ぶよね。保守費用が月々かかるよ。それ以外にも、前回話をした電気代なんかもかかるよね。」
くらら: 「そっか、TCOを考えるときには、そういう目に見えづらいコストも考えるべきなんですね。」

イチロー:「逆に、クラウドの場合は、ネットワークの利用料(通信費)などがかかる場合もあるから注意が必要だね。」

くらら:「実際に、医用画像の外部保存をする時って、どのくらいの費用がかかるもんなんですか?」

イチロー:「詳しいことは、もう少し仕組みを勉強をしてからにしよう。でも、ざっくりとした話をすると、病院で『所有』する場合と、外部保存を『利用』する場合で、TCOは、だいたい同じくらいじゃないかな?もちろん、サービスを提供するベンダーによってまちまちだけどね。GEの『医知の蔵』で試算してもらったところでは、初期費用+5年間の保守費と、5年間の外部保存サービスの利用料が、ほぼ同じくらいだったよ。電気代などを考慮に入れると、外部保存の方が少し安くなるかなって感じ。」

くらら:「あれ?クラウドって聞くと、安くなるっていうイメージがありましたけど、そうでもないんですね?あまり安くならないんなら、わざわざ外部保存にしなくても良いんじゃないですか?」

イチロー:「僕は逆に考えているよ。コストが変わらないんだったら、外部保存にした方がメリットが多いからね。」

くらら:「なるほど、今まで習ったように、災害対策になるとか、設置スペースが減らせるとか、キャッシュフローが改善されるってことですよね?」

イチロー:「そう。それ以外にもメリットがあるからね。まだ10個のメリットのうち、4つ目までしか見ていないでしょ?」

くらら:「そうでしたね!じゃあ、次の⑤運用管理の手間、についても教えてください!」

イチロー:「僕たちシステム管理者の仕事には色々あるけど、データを失わないようにしっかり維持することにも責任を負ってるんだ。だから、データの二重化がしっかり行われているか?、ハードディスクに故障が出ていないか?、ソフトウェアはちゃんと機能しているか?、もし問題があれば修正された最新バージョンにアップデートしたかどうか?、ストレージの空き容量は十分か?、足りなくなりそうならいつまでに追加しなきゃならないか?、などなど、色んな事を常に把握しておかなければならないんだ。」


外部保存と業務委託の関係は?